さなぎのなかみ

鬱々とした日々のこと。

剥製

昔ながらの旅館は入り口に剥製の置いてあることが多い。羽を広げた鷲や雉や山猫やら様々だ。同じ地球上に位置し同じ空間を共有しているのに剥製の纏う空気とこちらの纏う空気には確たる違いがある。ガラスケース一枚隔てただけでこんなにも違う。いくら見つめても目が合わない。

よく「死んだように眠る」という言葉が使われる。しかしどんなに微動だにしない人でも、じっと目を凝らすと呼吸しているのが気配でわかるものだ。生きているものはそれとなく知らせてくる。死んだものは何も言わない。

写真を見て記憶を呼び覚まし涙するよりも酷い。目の前にいるのにもういない。

生前の姿を眼の前にして生前の姿を思い浮かべようとしてしまうことの矛盾。