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さなぎのなかみ

思うこと諸々。

視線の向かう先

小雨が降ってくる。軒先に立ち空を見上げる。薄墨色の空は本降りになることを予感させる。傘は持っていない。止むのを待つか走って帰るか決めかねている。家まではまだ距離がある。ひさし、あるね。隣から声がする。伸ばさないのかな。何のことだろう。同じように空を見上げるその人は、降りしきる雨を見ているわけではないみたいだ。

 

天と自分の間に位置する、伸縮式のひさしのことを言っているらしい。同じような位置で、同じように上を向いているのに、視界に入ってこない。そこにひさしがあると、言われて気付く。

 

今の人、見た。今の見たでしょ、変だよね。街中ですれ違う人、もの達。大抵一瞬で通り過ぎてしまうそれらを視界に引き留めることは難しい。なんで、今見てたじゃん。あ、あなたは見たのですね。そんな素振りも見せなかったのに。いつのまに。顔と体はその方向を向いていても、焦点が定まらない。不躾にじろじろ見るのも申し訳ないと思う。二つのレンズで捉えることは、容易ではない。もっとクリアな視界が欲しい。