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さなぎのなかみ

思うこと諸々。

蝿の王国

雑記

オートロックの付いていない、昔からあるマンション。階段を昇っていくと、虫の死骸があたりに散らばっている。夏が近づくにつれ格段に数が増えるそれは、ほとんどが、黒く、小さい。蝿だ。一階から五階まで、満遍なく落ちているため、誰かが撒いているのかと思うほど。

 

誰か、死んでるんじゃないですか。でも死臭感じませんよね。

 

なるほど、そういえば、このマンションの住人を見たことはない。何度も訪れているのだから、一度くらい遭遇していても良さそうなものなのに。唯一会う人物は、管理人だけ。

 

何気なく見た一室の、窓が微かに開いている。見える景色は、暗い室内、明かりの灯らぬ蛍光灯。鼻を近付け、こっそりにおいを嗅いでみる。昔懐かしい家屋のにおいがする。馬鹿馬鹿しい考えだと頭を振る。

 

帰り際、管理人に挨拶をする。手元に握られた千円札には、久々に見る夏目漱石が写っていた。