さなぎのなかみ

鬱々とした日々のこと。

ハロウ

木地雅映子『氷の海のガレオン』を読み返す。

 

ふらっ、と指先の誘われるがままに本を開き、気付くと始めから終わりまで通読している。そんな風に、定期的に読み返す本の内の一冊。

 

木地さんの作品は、好きだけど、好きと言いたくない。好きよりも手許に置いておきたいという位置づけ。同じような作風であったり、似た雰囲気の作品を知らない。ある程度本を読む人ならわかると思う、木地雅映子とカテゴライズされて、自分の中の特別な位置を占めている。

 

杉子もどこかで生きている、と読むたび思う。大抵の本は、読み終わってぱたんと本を閉じてから、登場人物たちが生き生きと動き出すことはない。物語の余韻に浸ったり、内容について思考を巡らせることはあっても、あの子も必死で生きているから、なんていつまでもフィクションに身を窶したりはしない。

 

2,3日で消えてしまう魔法ではなくて、微かにだけど細い煙のように続いている。

 

他の小説にはない、何かしらを、受け取れる。受け取る、よりも分け与えられる、に近いような。生きるだけで磨り減っていく魂のメモリがじわじわ盛り返してくる。

 

 

 

氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)