さなぎのなかみ

鬱々とした日々のこと。

固形じかけのオレンジ

小学生の頃の手作り石鹸。夏休みの自由研究か何か。

 

緑色の石鹸を作ろう、そう思い立ち、キッチンの棚を漁った。丁度使いかけの抹茶粉末があったので、それを使うことにした。白と緑のマーブル模様になるだろう。出来上がりのイメージはできていた。

 

作業を終えて、そろそろ固まったかなと見に行くと、身に覚えのない色の石鹸ができていた。それは鮮やかなオレンジで、誰か自分以外の家族も作ったのかなと思った。けれど使った容器や置いた場所から考えて、それはどうも自分の作ったものらしい。

 

母親も見に来て、言った。「化学変化しちゃったね」。カガクヘンカ? 耳慣れない言葉と、目の前のオレンジ石鹸に、どうもすべてが嘘くさく見えてきた。脳内完成図と眼前のモノがいつまで経っても一致せず、ただぼんやりとその場に佇んでいた。

 

きっと自分の気付かないうちに、だれかがこっそり手を加えたに違いない。ビタミンCとか、オレンジ色になる薬でも入れたんだろう。なんでこんないたずらをしたのかわからないけど、許してあげよう。

 

成長し、化学変化の意味を知り、小学生当時の自分の、許した相手の大きさを知る。