さなぎのなかみ

思うこと諸々。

岡崎隼人『少女は踊る暗い腹の中踊る』

この作品、メフィスト賞を受賞したものの、文庫化はされず、作者も以降作品を発表していない。陰鬱で荒々しい空気は好みなのに、嘆かわしいことに高評価を聞かない。感想やレビューを当たってみると、ほぼ決まってこのような意味のことが書かれている。「舞城王太郎の劣化版」。

 

影響受けているという点で比べているんだろうけど、ジャンルとして括った場合にこの二人の作品は似て非なるもので、同一括弧内には含まれないように思う。帯にも書かれていたように、ジャンルは「青春ノワール」。

 

ノワールと冠する作品は結構希少で、馳星周花村萬月くらいしかぱっと思いつかない。僕が知らないだけかもしれないけど。ノワールはミステリやSFと違い、作風や文体に依るところが大きいので(菅原和也がノワールと呼べるか微妙なところはこれに起因する)、舞城作品を読む限り、ノワールの雰囲気は感じられない。

 

つまりこれは、グッピーとウサギのどちらが可愛いかと言っているようなものなので、比較対象とはならないということを言いたい。

 

この本の初読時、僕は二十歳前後だったように思う。作者が執筆当時の年齢とそんなに変わらない。ダークな雰囲気の作品が好きだったから、もう好みのど真ん中撃ち抜かれたことと記憶している。

二度目に読んだ時はそれから二、三年後で、読書量も格段に増え目も肥えてきた頃だった。おもしろかったことはおもしろかったが、語彙力の無さがちらついてしまいのめり込むほどではなかった。

 

 

本に読むべきタイミングというものがあるとして、この作品の読まれるべきタイミングというのは、きっととても短く狭い期間だったんだろうな。

 

好きな本、だった、になってしまうのが悲しいところではあるけど。

 

 

 少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)