さなぎのなかみ

鬱々とした日々のこと。

雑記

キッチンの話

以前付き合っていた人に、卵焼きがふわふわだね、これは中々作れるものじゃない、と褒められたことがあった。その日から私は卵焼きを作らなくなってしまった。 シンクの真後ろに洗濯機がある。部屋の構造上ここにしか置けないのだ。内見の時、近くにコインラ…

親しくなった人は夢の中で私のことを悪く言う

連日の雨とぐずついた空で体調が悪い。エアコンの除湿機能が効いていない。少しでも暑いと、寒いと、湿度が高いと、悪夢を見る。 旋盤カッターで髪を切ろうとしている子供がいる。やめなさい、やめなさい、と何度も呼びかける。必死で止めているのに、聞いて…

剥製

昔ながらの旅館は入り口に剥製の置いてあることが多い。羽を広げた鷲や雉や山猫やら様々だ。同じ地球上に位置し同じ空間を共有しているのに剥製の纏う空気とこちらの纏う空気には確たる違いがある。ガラスケース一枚隔てただけでこんなにも違う。いくら見つ…

ミミック

真っ赤な林檎の中身が黄色くて衝撃を受けた記憶はない。 何が入っているでしょーか、と差し出された卵を振って確かめた憶えもない。 見るものすべてが新鮮だった時期の、早く世界に適応しようと、とにかく目につくものを覚えなければいけなかった頃の、数あ…

失われた電池を求めて

今、何時だろう、ふと顔を上げてみる。リビングの壁に掛かった大きめの時計、針が指し示す時刻は8時35分。そんな筈はない。ご婦人宅にお邪魔したのは正午過ぎ、未だ2時間も経っていない気がするが。ケータイで確認する。16時。正確な時間が分かってホッとす…

固形じかけのオレンジ

小学生の頃の手作り石鹸。夏休みの自由研究か何か。 緑色の石鹸を作ろう、そう思い立ち、キッチンの棚を漁った。丁度使いかけの抹茶粉末があったので、それを使うことにした。白と緑のマーブル模様になるだろう。出来上がりのイメージはできていた。 作業を…

知らない映画を知らないまま

ふとかすかな記憶がよみがえった。小さいころ、タイトルも内容も知らない映画を観せられそうになったことがある。視聴覚室での上映とかの学校行事ではなく、映画館で一般上映されている映画だ。 親は家族全員を連れて行こうとした。どこからその情報を仕入れ…