さなぎのなかみ

思うこと諸々。

ベストタイミング

翻訳モノを初めて読んだときに感じた、薄皮一枚隔てたような、ヴェールの向こう側を読んでいるような感覚はもう、とうに忘れてしまった。翻訳されたという一プロセスを経てのちでは、慣れ親しんだ日本語でもすんなり入っては来ないのかと思ったもの。 ボルヘ…

星新一という作家

鏡明『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』を読んだ。内容は、膨大な知識量によるSFについての考察や評論など。その中での一項、星新一についての話。 ここで著者は、星新一という作家について、語るべきことを持っていない、と…

ものごとのわかるとき

近藤聡乃エッセイ集『不思議というには地味な話』中の一遍に、こんな逸話が紹介されている。 ・幽体離脱したら、天井の隅にいつの間にか穴が空いていてすいこまれた。中はびっしりと水晶が生えた空洞で、とても心地良い音楽が流れていた。そこをゆっくり回転…

天丼はギャグの基本ということですね

つばな『第七女子会彷徨』10巻、とても良く収斂されたラストだった。以下本書のオチについて触れています。 新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』に、こんなTT(タイムトラベル)分類表がある。 改変型 1……個人的な過去をやりなおそうとする話 過去へ戻…

他の著作は文庫化するのかな待ち遠しいんですけど

夢や希望、絆とか明るい未来なんて言葉を言われると、身構えてしまう。基本的にそういった陽性の語句ばかり出てくるような小説は読まないし、現実では、嘘でも口から言いたくはない。雪舟えま『地球の恋人たちの朝食』(上・下)では、そんな遠いところにあ…

すべてがSFになる

池澤春菜『SFのSは、ステキのS』を読む。SFのコラムなのでSFの話がメインなのだけれど、有名どころを齧っている程度のSF読みでも大変楽しめる。 メインはSFでありSFではない。これは、SF層がターゲットと見せかけて、本読み(多少なりともSF含む)かつ、オタ…

ハロウ

木地雅映子『氷の海のガレオン』を読み返す。 ふらっ、と指先の誘われるがままに本を開き、気付くと始めから終わりまで通読している。そんな風に、定期的に読み返す本の内の一冊。 木地さんの作品は、好きだけど、好きと言いたくない。好きよりも手許に置い…

歌集 野口あや子『夏にふれる』

気に入ったのいくつか。 かあさんは食べさせたがるかあさんは(私に砂を)食べさせたがる Re:Re:を振り切るような出会いかたピアスの数がまた増えていた しゅっとでた切符のかどがよじれててわたしたちなにか間違えました? 青空に飛行機雲が刺さってるあれ…

隣人を愛せと私が言った、私の与り知らぬところで。

「さよなら、わたし。 さよなら、たましい。 もう二度と会うことはないでしょう」 伊藤計劃『ハーモニー』のコミカライズは、原作をちゃんと読み込んでるのが感じられてとても楽しめた。期待してなかった分、特に。キャラの表情にも引っかかるところがあって…

クリハラタカシ『冬のUFO・夏の怪獣』

総天然色漫画。四コマだったり短編だったり。ナナロク社HPでいくつかの作品が読める。 「それはホントに? ウソに?」「なーん!」など妙に味のある言い回しがクセになる。 たとえば歌人や詩人は日常の些細な違和を切り取るのが上手いと聞いたことがある。…

イースターではない、白くて丸い、あの卵

蜂飼耳『空席日誌』より。 この本は、小説とエッセイ、日記を混ぜ合わせたような文から成る一冊。その中に「特別なたまご」という一遍がある。 出先で他者から卵(生)をひとつ、プレゼントされるというお話。 他の著者のエッセイでも何度かそういう出来事を…

岡崎隼人『少女は踊る暗い腹の中踊る』

この作品、メフィスト賞を受賞したものの、文庫化はされず、作者も以降作品を発表していない。陰鬱で荒々しい空気は好みなのに、嘆かわしいことに高評価を聞かない。感想やレビューを当たってみると、ほぼ決まってこのような意味のことが書かれている。「舞…

古川日出男『沈黙/アビシニアン』

覚え書き程度。自分なりの解釈。ことばによる世界。 「十五年間など、人生とはだれも呼ばない。短すぎるし、若すぎる。あるいは幼すぎるのだろう。でも、生きるのは事実むずかしかった。生き延びるのは。」(p.392) 生き延びるために、ひとりの少女(エンマ)…