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さなぎのなかみ

思うこと諸々。

剥製

昔ながらの旅館は入り口に剥製の置いてあることが多い。羽を広げた鷲や雉や山猫やら様々だ。同じ地球上に位置し同じ空間を共有しているのに剥製の纏う空気とこちらの纏う空気には確たる違いがある。ガラスケース一枚隔てただけでこんなにも違う。いくら見つ…

ベストタイミング

翻訳モノを初めて読んだときに感じた、薄皮一枚隔てたような、ヴェールの向こう側を読んでいるような感覚はもう、とうに忘れてしまった。翻訳されたという一プロセスを経てのちでは、慣れ親しんだ日本語でもすんなり入っては来ないのかと思ったもの。 ボルヘ…

星新一という作家

鏡明『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』を読んだ。内容は、膨大な知識量によるSFについての考察や評論など。その中での一項、星新一についての話。 ここで著者は、星新一という作家について、語るべきことを持っていない、と…

ものごとのわかるとき

近藤聡乃エッセイ集『不思議というには地味な話』中の一遍に、こんな逸話が紹介されている。 ・幽体離脱したら、天井の隅にいつの間にか穴が空いていてすいこまれた。中はびっしりと水晶が生えた空洞で、とても心地良い音楽が流れていた。そこをゆっくり回転…

全てのカラスは黒くない

ヘンペルのカラスとは一切関係ない。白いカラスを見た、という話。 太陽高いお昼時、一本道を歩いていると、空から黒い物体が下降してくるのが見えた。たぶんカラスだろう、とさして注視もせずにいたら、瞬間、まっしろに変貌した。そこだけ、ネガポジ反転。…

車窓からの景色

招き猫を見る。どこにでもいる量産品であろうそれを、二度見てしまう理由はどこにあるのだろう。右手に大判を抱え、左手で福を招いている、猫。つぶさに観察していると、左手が歪なことに気付く。若干、無理をしているのだ。関節の可動域からして、無理な体…

天丼はギャグの基本ということですね

つばな『第七女子会彷徨』10巻、とても良く収斂されたラストだった。以下本書のオチについて触れています。 新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』に、こんなTT(タイムトラベル)分類表がある。 改変型 1……個人的な過去をやりなおそうとする話 過去へ戻…

ミミック

真っ赤な林檎の中身が黄色くて衝撃を受けた記憶はない。 何が入っているでしょーか、と差し出された卵を振って確かめた憶えもない。 見るものすべてが新鮮だった時期の、早く世界に適応しようと、とにかく目につくものを覚えなければいけなかった頃の、数あ…

脳にふれる(物理)

のうみそ、のうみそ、街角のパン屋さんで使われているような、茶色い紙袋の口をすぼめ、つき出してくる。手を入れろ、ということらしい。 中の物体に触れると、指先の皮膚が一枚の板切れになってしまったかのような冷たさに、身がすくむ。握りつぶさないよう…

視線の向かう先

小雨が降ってくる。軒先に立ち空を見上げる。薄墨色の空は本降りになることを予感させる。傘は持っていない。止むのを待つか走って帰るか決めかねている。家まではまだ距離がある。ひさし、あるね。隣から声がする。伸ばさないのかな。何のことだろう。同じ…

掌握

ベッドに寝転んで、天井を見上げる。ボーッとして、何も考えない。一面真っ白な壁紙で、そんなに新しいわけでもないのに、シミ一つ見つからない。電球と、火災報知器、そこだけ飛び出ている。かさいほうちき、と声に出して呟いてみる。あ、と思う。 視線を少…

他の著作は文庫化するのかな待ち遠しいんですけど

夢や希望、絆とか明るい未来なんて言葉を言われると、身構えてしまう。基本的にそういった陽性の語句ばかり出てくるような小説は読まないし、現実では、嘘でも口から言いたくはない。雪舟えま『地球の恋人たちの朝食』(上・下)では、そんな遠いところにあ…

蝿の王国

オートロックの付いていない、昔からあるマンション。階段を昇っていくと、虫の死骸があたりに散らばっている。夏が近づくにつれ格段に数が増えるそれは、ほとんどが、黒く、小さい。蝿だ。一階から五階まで、満遍なく落ちているため、誰かが撒いているのか…

失われた電池を求めて

今、何時だろう、ふと顔を上げてみる。リビングの壁に掛かった大きめの時計、針が指し示す時刻は8時35分。そんな筈はない。ご婦人宅にお邪魔したのは正午過ぎ、未だ2時間も経っていない気がするが。ケータイで確認する。16時。正確な時間が分かってホッとす…

すべてがSFになる

池澤春菜『SFのSは、ステキのS』を読む。SFのコラムなのでSFの話がメインなのだけれど、有名どころを齧っている程度のSF読みでも大変楽しめる。 メインはSFでありSFではない。これは、SF層がターゲットと見せかけて、本読み(多少なりともSF含む)かつ、オタ…

ハロウ

木地雅映子『氷の海のガレオン』を読み返す。 ふらっ、と指先の誘われるがままに本を開き、気付くと始めから終わりまで通読している。そんな風に、定期的に読み返す本の内の一冊。 木地さんの作品は、好きだけど、好きと言いたくない。好きよりも手許に置い…

固形じかけのオレンジ

小学生の頃の手作り石鹸。夏休みの自由研究か何か。 緑色の石鹸を作ろう、そう思い立ち、キッチンの棚を漁った。丁度使いかけの抹茶粉末があったので、それを使うことにした。白と緑のマーブル模様になるだろう。出来上がりのイメージはできていた。 作業を…

オープンセサミ

パスワードを忘れて困っている人に、「開けゴマ」で開きますよ、と助言してあげたところ、そんな古い呪文よく知っているね、と言われた。 開けゴマの出典元はかの有名なアラビアン・ナイトの「アリババと40人の盗賊」であり、民間伝承やらの類と同じく、遥…

鏡の法則ってそれマジックミラーだよ

人が何を信じていようがいまいが他人に迷惑をかけない限りは自由だと思っている。しかし思想の押し付けとなるのなら、こちらにも反論の準備がある。 今更感はあるけど、鏡の法則とは簡単に言うと、相手は自分を写す鏡であり、良いことをすれば良いこととして…

歌集 野口あや子『夏にふれる』

気に入ったのいくつか。 かあさんは食べさせたがるかあさんは(私に砂を)食べさせたがる Re:Re:を振り切るような出会いかたピアスの数がまた増えていた しゅっとでた切符のかどがよじれててわたしたちなにか間違えました? 青空に飛行機雲が刺さってるあれ…

隣人を愛せと私が言った、私の与り知らぬところで。

「さよなら、わたし。 さよなら、たましい。 もう二度と会うことはないでしょう」 伊藤計劃『ハーモニー』のコミカライズは、原作をちゃんと読み込んでるのが感じられてとても楽しめた。期待してなかった分、特に。キャラの表情にも引っかかるところがあって…

知らない映画を知らないまま

ふとかすかな記憶がよみがえった。小さいころ、タイトルも内容も知らない映画を観せられそうになったことがある。視聴覚室での上映とかの学校行事ではなく、映画館で一般上映されている映画だ。 親は家族全員を連れて行こうとした。どこからその情報を仕入れ…

クリハラタカシ『冬のUFO・夏の怪獣』

総天然色漫画。四コマだったり短編だったり。ナナロク社HPでいくつかの作品が読める。 「それはホントに? ウソに?」「なーん!」など妙に味のある言い回しがクセになる。 たとえば歌人や詩人は日常の些細な違和を切り取るのが上手いと聞いたことがある。…

イースターではない、白くて丸い、あの卵

蜂飼耳『空席日誌』より。 この本は、小説とエッセイ、日記を混ぜ合わせたような文から成る一冊。その中に「特別なたまご」という一遍がある。 出先で他者から卵(生)をひとつ、プレゼントされるというお話。 他の著者のエッセイでも何度かそういう出来事を…

夢の中で入るコンビニは品物が入荷されない

気付いたら店内で何かを買おうとしている。ふらふらと、何処かへ行くついでに寄ったようだ。目的地に着くまでの腹ごしらえのつもりなのか、パンや菓子の棚の前にいる。隙間が多く、透明のプラ板が目立つ。だいたいが、食べたいものが見つからなくて、そのま…

岡崎隼人『少女は踊る暗い腹の中踊る』

この作品、メフィスト賞を受賞したものの、文庫化はされず、作者も以降作品を発表していない。陰鬱で荒々しい空気は好みなのに、嘆かわしいことに高評価を聞かない。感想やレビューを当たってみると、ほぼ決まってこのような意味のことが書かれている。「舞…

古川日出男『沈黙/アビシニアン』

覚え書き程度。自分なりの解釈。ことばによる世界。 「十五年間など、人生とはだれも呼ばない。短すぎるし、若すぎる。あるいは幼すぎるのだろう。でも、生きるのは事実むずかしかった。生き延びるのは。」(p.392) 生き延びるために、ひとりの少女(エンマ)…